歎異抄の基 教行信証より
歎異抄の基
教行信証という書物があります。
これは、親鸞聖人が書き残された浄土三部経を軸に、お念仏の教えを解かれた論文です。
その論文が、基となり歎異抄などの書籍が生まれています。
浄土真宗の始まりの論文にある序文を、私風に訳してみました。
鼻で笑うのであればそれもありだと思います。
古典を楽しみ、自分らしく生きる事を大切にする、真宗の教えに少しでも触れる事があれば幸いです。
①竊以難思弘誓度難度海大船
竊以難思弘誓度難度海大船、無碍光明破無明闇恵日。
落ち着いていろいろ思案してみれば、弥陀弘誓の船は、人生という名の大海に出かけ、総ての荒波を乗り越え、渡りきるための大きな豪華客船の様なものだ。
無碍の光明の届く時は、自分の殻にヒビが入り自分が狭い事を気付ける幸運な時だ。
②然則浄邦縁熟調達闍世興逆害
ちょうどそれは、自分の考えに凝り固まり、視野が狭くなった阿闍世が父親を殺す事件を興した王舎城の悲劇の様なものだ。
③浄業機彰釈迦韋提選安養
浄業機彰釈迦韋提選安養 浄土のはたらきと、人のわがままなご都合の姿を、お釈迦様は韋提希夫人を通して総てが安養の世界であることを教えてくれた。
④斯乃権化仁
斯乃権化仁、斉救済苦悩群萌、世雄悲正欲恵逆謗闡提。
これは阿弥陀からの愛ある表現であり、悩みが生まれる総ての人々に対して、阿弥陀佛は悲しみを通すことで、正しく気づきを促し、救済を行う。
⑤故知円融至徳嘉号
故知円融至徳嘉号転悪成徳正智、難信金剛信楽除疑獲証真理也。
ゆえに知っておくべき事は、良い事と悪い事は総てが一つであり、自己都合で良くも悪くも転ずる現実を理解するのが正しい智恵である。
また、自己都合が先に立ち、阿弥陀から信じられている、自分を任せられている事に気づけない私たちに、少しでも自己中心の考え方に、疑いを持ち、真理に気が付き、危機は好機と捉える智恵を身に着ける事ができる。
⑥爾者凡小易修真教
爾者凡小易修真教、愚鈍易往捷径。
これはいかなる人でも、身に着ける事ができる簡単で真の教えであり、いかなる人も容易に進むことができる優れた道です。
⑦大聖一代教
大聖一代教無如是之徳海。
これは、釈迦弥陀が教えてくれた、唯一、功徳海での在り方です。
⑧捨穢欣浄
捨穢欣浄、迷行惑信、心昏識寡、悪重障多、特仰如来発遣、必帰最勝直道専奉斯行、唯崇斯信。
穢れをきらい、綺麗な世界だけを欲しがり、欲望を叶える生き方を模索し、その時都合の願い事に振り回され、仏教の本質を知らず、迷信に踊らされ、日々の生活に追われ、自分中心の生活を送る人達よ。
特に如来からのはたらきかけに耳を傾け、最も優れたこの道に立ち帰り、専ら円融至徳の嘉号を称え、この教えを大切にしてください。
⑨噫弘誓強縁
噫弘誓強縁、多生叵値真実浄信、億劫叵獲。
弥陀弘誓よりいただいた強い縁、いかなる生き方にも値し、真実の信心をいただき浄土に触れる生き方を獲る事は、どれだけの時間があっても自分の力だけでは、とても難しいです。
⑩遇獲行信、遠慶宿縁
遇獲行信、遠慶宿縁。
偶然にも円融至徳の嘉号の教えを獲られたことは、総てのこれまでに感謝し何より慶べる縁のせかいです。
⑪若也此回覆蔽疑網
若也此回覆蔽疑網、更復逕歴曠劫。
もしまた、自己都合の生き方に引き戻された時には、見直せば大丈夫です。
⑫誠哉、摂取不捨真言
誠哉、摂取不捨真言、超世希有正法、聞思莫遅慮。
嘘ではありません。
総ての人を見捨てず、選ばず、嫌わず救い、一人の落後者も作らない真の言葉。
時代を超えた最も優れた稀な正しい法則、これを聞いた以上は、遠慮なく堂々と今を生きればよい。
⑬爰愚禿釈親鸞
爰愚禿釈親鸞、慶哉、西蕃月支聖典、東夏日域師釈、難遇今得遇、難聞已得聞。 ここに、いつも至らない私こと親鸞は、インドネパールから始まったこの教えを、シルクロードを経由し、多くの学者により解説されたこのお教えに、運よく出遇えたこと、耳にできたこと、これは人生最高の慶びでしかない。
(まとめ)敬信真宗教行証
敬信真宗教行証、特知如来恩徳深。
お念仏の教え、真の宗の教えを敬い信じ、特に如来の恩徳の深さを知りました。
斯以慶所聞、嘆所獲矣。
ここに、念仏の教えを、聞ける場所をいただけた喜び、今を獲られたことを何よりも感謝しかありません。